DNAを持つ粒一戸がバクテリアの10倍もの数で海水中に存在していることが、蛍光顕微鏡での観察からわかってきた。電子顕微鏡によって見えている粒子の形を拡大して調べると、これはその大部分はバクテリアや植物プランクトンなどに寄生するウイルスであることが確認された(写真−2)。このように海の中には大きさが1mmの1万分の1にも満たないウイルスから、肉眼で見える数mmから数cmの動物プランクトン、さらには長さ数十mのクジラまでが生活しており、その数は小さいものの方が圧倒的に大きいことになったわけである。図−1にこれまで見つけられた海洋表層の色々な微小プランクトン群集の大きさの範囲をまとめて示した。
生物の場合は、電子顕微鏡まで動員すれば、形態的な特徴で少なくともどのグループに属する生物かを判定できるし、これらの研究もこれまでに多い。一方、年物に比べて形態的な特徴がはっきりしない非生物を主体とした有機懸濁物粒子は、初めに紹介したマリンスノーを含めて今でもよくわかっていないことが多い。形態のはっきりしていないものを一般に不定型と呼ぶが、海洋中の非生物有機物の大部分はその大きさにかかわらず不定型であり、多様な起源を持っているものが混ざりあっている可能性が高い。従ってまず生物という形の有機物粒一子と対応させるには、その大きさ当たりの数の分布が海のそれぞれの深さでどうなっているのかを知ることがまず最初である。さらにそれぞれの大ききのものがなにから出来ているかを知り、さらにどのようにしてできるかがわかれば、海の中でこれらの非生物の懸濁粒子がどのような役割を果たしているかについて考えることができる。
マリンスノーについては、肉眼でも観察できることから水中カメラを船からつり下げたりあるいは潜水挺から写真にとることで、大きさ別に分けてその計数が行われている。日本では海洋科学技術センターにおいて辻義人氏が開発した、水中カメラの前に透明な箱をおいて一定距離のマリンスノーがはっきりと撮影できるようにした装置がある(写真−1)。この装置を用いて数えることができるマリンスノーは大きさが0.3mm以上であるが、駿河湾では1リッター中にマリンスノーは数十個であり、1個当たりの平均の体積は約1−5mm3であった。
大きさが1mmの10分の1から、1ミクロン位までの懸濁粒子に関しては、電気的な原理を使った粒子カウンターで数えることができる。これはある大きさの孔を通して海水中の粒子を1つの容器からもう1つの容器に移すとき、この2つの容器の間に弱い電流を流しておくとその電流が懸濁粒子の大きさに従って変化するという原理を使ったもので、一般には病院等で赤血球を数えるのに使われているものである。この装置によって、海水中に含まれる懸濁粒手の大きさ別の数についての情報を得
写真−2 海洋ウイルス(原成光ほか、1991)。(A)内湾表層水を蛍光色素で染めた顕微鏡写真。大きな矢印は小さな細菌、小さな矢印はウイルスと考えられる粒子。図の下方の横線が5μm。(B)海洋ウイルスの電子顕微鏡写真。矢印がウイルスで中央の塊は不定形の有機コロイドである。図の下方の横線が0.1μm
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